ZERO 花男 青い春
ピンポン それでは、あたしの思い入れのままに、大洋さんの紹介をします。
まず、「何も言うな。とにかく読ませろ!」という人には、おススメ…うーん、ホントに選ぶのが難しい。えーい!「鉄コン筋クリート」!どれ読んでも、好きな人は一発で気にいるだろうし、ダメな人はダメです。でも、くせが強いだけに、ツボにはまると、もう中毒です。極端な遠近法とか、落書きのような背景、登場人物の表情、せつない感じがする花とか空とかの風景。目がもう喜ぶというか、見てて快感というか。だから、画集「100」なんかでも、もう全然飽きないです。いい表情っていろいろあるんやなー。笑い方にもガハハとかウヒョヒョとかニーッとかそれぞれ違う顔があって、何か考えてる顔とか、何も考えてないときの顔とか、睨んでるとかちょっと悲しそうとか微妙な表情がたくさんあって、全部が生き生きしてる。当然のごとく、挿絵を描いていらっしゃる「八月の金貨」とか「海へ向かう少年」とかも欲しくなる訳です。
この児童書というところがまた「いいとこ突いてるー!」って感じで、考えてみると大洋さんがよく主人公にする男の子達の年代の話な訳で、「八月の学校」「海」「友達のお父さん」なんて言うキーワードや、無邪気に魚を踏みつぶして遊ぶという様なエピソードなんて全く違和感なく大洋さんの漫画と結び付いてくるんですね。それにしても「八月の金貨」っていいタイトルだなぁ。(これは大洋さん作じゃないけど。)
そんな訳で、絵が素晴しいのは誰もが認めるところで、イラストレーターとしてもあちこちで活躍していらっしゃるんですが、漫画のストーリーもこれまたいいんです。詩のような台詞、暴走するクライマックスへの加速感、ポカンと覗く晴れ間。怒涛のようにしゃべりまくったり、全く音がなかったり、映画で言うと編集とか演出とかが完璧。「ピンポン」読んでたら、シーンとした後にワーッていう歓声が聞こえたもんね。読み出すともうどっぷりその世界に漬かりこんじゃって、後はもうされるがままという感じです。「ゼロ」「花男」「鉄コン筋クリート」「ピンポン」。全部とにかくクライマックスの緊張感はすごいッス!
短編集もあります。「青い春」、「日本の兄弟」。甲子園に行く一歩手前の決勝戦で負けた高校球児が、その夏中、部室にこもってマージャンしてるとか、ファミレスで好きかってにかみ合わない会話を続けてる内に大乱闘になるとか、なんかパンク。かと思えば、ストーリーとかなくてまるで詩とか、ちょっとこんな事考えたんだろうなみたいな話もあったりで、哲学的だなぁと思ったり。
てな訳で、悔しいことにまだ手に入らない本もあるし、今となってはもう読めないかもしれない話もあるんですが、ざざっと紹介してみました。最近、いくつか詳しい紹介のページもあるみたいです。でも、もう読んでみるのが早いです。ジンタ君の書く曲が好きなあなたはきっと分かってくれるでしょう、あたしのこの気持ち。(春川玲子)
鉄コン筋クリート
日本の兄弟
100 八月の金貨 海へ向かう少年







***松本大洋著作リスト***
『STRAIGHT ストレート』1講談社89.1.23B6420*
『STRAIGHT ストレート』2講談社89.12.18B6430*
『ゼロ』1小学館91.5.1B6500*
『ゼロ』2小学館91.8.1B6500*
『花男』1小学館92.5.1B6500
『花男』2小学館92.8.1B6500
『花男』3小学館92.10.1B6500
『青い春』小学館93.7.1B6500
『鉄コン筋クリート』1小学館94.3.1A5850
『鉄コン筋クリート』2小学館94.5.1A5850
『鉄コン筋クリート』3小学館94.7.1A5850
『ゼロ』上小学館95.9.1A5900
『ゼロ』下小学館95.9.1A5900
『日本の兄弟』マガジンハウス95.10.19A51100
『100』小学館95.11.20A42500
『ピンポン』1小学館96.9.1A5900
『ピンポン』2小学館97.1.1A5900
『ピンポン』3小学館97.4.1A5900
『ピンポン』4小学館97.8.1A5920
『ピンポン』5小学館97.10.1A5920


松本大洋
1967年、東京に生まれる。漫画家。19歳のときに、デビュー作「ストレート」を雑誌に発表。以後、漫画を中心に、イラストレーターとしても活躍している。主な作品に、「ストレート」(講談社)、「ゼロ」「花男」「鉄コン筋クリート」「ピンポン」(小学館)がある。神奈川県在住。



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